【VOZ. 47】賞与支給の重み ~トップからのメッセージ~
先月、夏季の賞与支給についての相談を2社から受けました。
どちらの会社も今期は震災の影響で業績が厳しく、昨年並みに賞与が支給できないという状況でした。賞与は、「会社の業績と連動」させることをアドバイスしてきた企業であり、数年前から賞与支給額の決め方、支給の仕方も変えてきました。
2社は、業種は全く違いますが、社員数は100名程度、この夏の賞与は出せなくても冬に出せれば、社員も納得・・・という同じような状況でした。しかし、どちらの会社も経営者のトップの意向で、業績が厳しい中でもできるだけ今回の賞与は支給したいということでした。社員の生活はもちろん、モチベーションの低下が心配だという理由でした。他社では、賞与カットが珍しくないこのような状況下ですから、両社の社員にとってはいい話です。最終的には経営判断で支給額が決定され支給されました。
ところが、支給時のメッセージの伝え方に大きな違いがありました。
<A社の場合>
支給するときに、トップ自らが会社全体の業績状況と今後の見通しについて社員に対して発信し、なぜこの状況下で賞与を支給するのか、なぜこの支給額なのかということを社員に直接説明しました。
<B社の場合>
支給する背景にあるトップの意向は、A社と全く同じ。支給額の検討や社内手続きも同じように進められました。ただし、違うところは、賞与支給に関するトップからの社員に対する説明や発信は、何もされませんでした。代わりに部長クラスが各部で説明しましたが、当然ながら伝わり方は、部によって差が出ました。
そして、この2社で支給後に社員からの反応に大きな違いが出ました。
A社の社員からは、今回の賞与支給で「ありがとうございます」という言葉が直接トップに返ってきたそうです。これまでにも多くの金額を支給して来たのに、お礼の言葉は聞いたことはなかったそうです。
一方、B社では、社員から支給額が少ないとクレームが出たそうです。会社の業績のマイナスと自分の支給額のマイナスが割りに合わないという主旨です。実際の支給額は、極端な減額はされていませんでした。これまでには、賞与の支給額に関するクレームは、なかったそうです。
この違いは、何でしょうか?賞与支給時の社員へのトップからのメッセージの違いです。
B社のトップも社員のために良かれと思い支給額を決断しました。しかし、残念ながら、社員には、そのトップの意向は伝わらなかったのです。業績の厳しい同じような状況下で、同じような経営努力により賞与支給を決定し、同じような額を支給したのに、大きな違いになりました。
社員にとっては、賞与支給を通して、会社の業績を肌身で感じ、トップの考えや想いをタイムリーに理解し、モチベーションアップのきっかけをつくれる絶好のチャンスでもあると思います。
改めて、賞与支給の重みと支給時のトップからのメッセージの大切さを感じました。
皆さんの会社では、どうでしょうか?
<2011年8月 shiba>